癌と共生する
私は十数年前に癌になりました。
宣告だけでも辛いのに余命宣告まで受け、
その後1か月は陽射しを浴びても、樹々を見ても、
外界との間に薄皮が一枚挟んであるように心は彷徨っていました。
その後患者会、病院、湯治場で多くの癌患者に会いました。
そこで私は生還した人、共存している人に二つの共通項があることを見つけたのです。
一つは、癌の正体を徹底的に調べ得体のしれない不安を解消して癌に対峙している人達でした。
私達は未知のものに恐怖や不安を感じます。それらは不眠や動悸、食欲不振、活力の低下など体調不良をもたらし免疫を下げます。癌と正面から向き合い、知ろうとする研究心が乗り越える力を与てくれる。不安が解消されれば明日に向かって進もうとする意欲が湧いてきます。
二つ目は、何か心を預けるものをお持ちの人達でした。
ある方は、中国駐在時に現地の人から胃癌に効くからと勧められた独特の匂いの蜂蜜。20年経った今でも送られ飲み続けているそうです。彼は患者として山あり谷ありだったがこうして元気にしていられるのはその蜂蜜のおかげと感謝していました。
また、ある80歳の方は、40歳で乳がんに罹り、幼い子どもを残しては死ねないと友人が勧める教会に1時間半かけて週に何度も通い一心に祈ったそうです。
「心から信じ心を預けたものは未来をもたらす」であろうとことは疑いありませんでした。
内部から湧き出る信念を得た者が、癌に打ち勝とうとする強い精神力を保ち、癌を乗り越えることが出来るのかもしれません。
であるならば、
なにかを心から信じ心を預けられるものに出会うことが、運命を分けるのでしょうか。